第12話
小林覚九段事件のこと


1月11日、

名人リーグ趙治勲九段vs柳時熏天元戦を見てきました。

私が観戦記者になったのが、ちょうど趙治勲挑戦者が武宮正樹名人から名人を奪ったとき。大三冠だったこともあり、趙治勲九段というのは挑戦手合のときしか会えないすごい人という印象が強いのです。最近よく棋院で手合いを打っているのを見るようになりました。当たり前のことなのにいまだに「あ、治勲先生がいる」と特別に思ってしまいます。

対する柳時熏天元。
みなさんもご存じかと思いますが、昨年末中国であった春蘭杯の一回戦が終わった夜、ホテルのバーで呑んでいる席で、柳さんの顔面に小林覚九段が持っていたブランデーグラスがあたり16針縫う怪我を負ったという事件がありました。

翌日の中国の新聞に報道され、それをみた日本のスポーツ紙がでかでかと書いて話が大きくなりました。

1月5日打ち初め式のあと記者会見があり、私も参加してきました。(日本棋院の理事の説明などは日本棋院のHPを見てね)

棋士の身分に関することは棋士総会にかけるという規則があるそうなんですが、棋士総会をやらずに決定してしまったので、棋士は発言の場はもちろん、経過報告の場もなかったので、記者会見に集まってきました。棋士だけでも30〜40人はいたでしょうか。そういう中なので棋士は発言を制限されていた(棋士は日本棋院がわの立場)ので、頼まれて代わりに質問とかしちゃっいました。

「引退届が出たのと1年の謹慎処分決定はどちらが先なのですか」「山下碁聖、彦坂九段、(ともに現場にいた)のふたりが記者会見に出席するのを(理事会が)拒否した理由は?」など(もっとやわらかいいい方でしたが)。

引退届けが出る前に(当事者から事情を聞く前って意味ですが)、1年の謹慎処分が決定されていたということだそうです。万事決定が遅い棋院がなんでこんなに早いのか……。なんかおかしい。

要は、酔っていて(ブランデーグラスを持っていたのすらわからない状態/覚九段は朝起きて、自分の右手が血だらけでびっくりしたくらい)何をやっているかわからず故意ではない(殴るつもりはなかった)けれど、けがをさせたという結果があるということと、海外棋戦の最中ということで1年間の謹慎にしたということだそうです。

故意ではなければ1年はあまりに過酷すぎる、他の方法はないのかというのが、そこに出席していた棋士ほとんどの考えでしょうか。

「前例がない分、これが前例になるので、もっと量刑(?)など慎重にするべきだ」(酒井猛九段)など、不規則(?)発言があると、「棋士のかたは発言を控えてください」といわれ止められてしまいました。しかし、依田名人は知能犯。「発言しちゃだめ?だめかな?」と前置きすると、人間ってだめとはいえないものですね。依田くん、えらい!で、「この件で、だれも幸せになっていない。被害者の柳はもちろん、日本棋院も大変だったろうし、覚先生も。1年も手合いを打つな、といっては、僕が柳なら心苦しい。柳に心の負担をさらに増やす方法は良くないと思う。だから、なんとか他のことで。例えばトイレ掃除はどうでしょうか」

トイレ掃除がいいかどうかは別として(依田名人は強くご推奨)、本当に何か他の方法はなかったのでしょうかねえ。(私は罰金がいいと思う)。某棋士が「老人ホームなどを慰問して碁を教えるのはどうか」といったのですが、依田名人はすかさず「何、馬鹿なこといってるんだ。そんな『罰』で教えられる人の身になってみろ。おかしいだろう。老人ホームで碁を打つなんて、喜びでやらなくてどうする?!」。おっしゃる通りですね。

「顔面に16針縫う。1年半したら整形手術できれいする」と聞いていたので、どんなすごいのか、と思っていましたが、実際見た柳さんの顔には、10円玉ほどの大きさを覆うくらいのバンソコが貼ってありました。ブラックジャックかお岩さんかと想像がたくましくなっていた私は、ほっとしました。石田九段に「思ったよりキズの範囲が狭くて、よかった、というのでしょうか」と話すと、「顔だから丁寧にやるから16針になったんでしょう」。

林芳美ちゃんによると、「悪いことが重なった」そうです。中国の報道はセンセーショナルな上、日本に比べて囲碁は若い人もすごく関心がある話題。聶衛平九段が街を歩いていると、サイン攻めにあうほどだそう。だから大きく取り上げられた。日本だったらここまでの報道にはならなかったでしょう。

中国棋院からも「減刑嘆願書」が届いたそうです。中国の報道がおおげさだったからでしょうか。持っていたのがブランデーグラスだったのも、悪かった。ビールジョッキなら青タンくらいですんだのに。また、覚九段がタイトル保持者だったりリーグに入っておらず決まった対局がないので、すんなり(?)と1年の謹慎が通ってしまった(決まった対局があると、新聞社との契約など問題が多い)。などなど……。

今日まで、この文章を書こうかと思うと、新しい情報が入ってきたりしてなかなか完成させることができませんでした。ちょっと電話などすると、「どうなってるの?」と質問され、話した回数、数知れず。話すと長くなりました。私が知り得た限りで取捨選択し自分の考えを入れていますので、間違っていることがあるかもしれません。気がついたらまた書きますね。

なゆき


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